
地域医療の定義にはたくさんありますが、地域医療振興協会によれば「地域医療とは医療人、住民と行政が三位一体になって、担当する地域の限られた医療資源を最大限有効に活用し、継続的に包括的な医療を展開するプロセスである」とあります。この定義が作られた時から社会情勢などは大きく変化していますが、今もなお重要な定義であると考えています。
当講座の英語名を見ていただけるとそのことがわかると思います。Family Medicineは国際的には家庭医療、我が国では総合診療とも訳されています。文字通り家族を単位として診療する、小さい赤ちゃんから高齢者までを診療する医療のカタチで、我が国でも2018年に正式に19番目の専門医として「総合診療医」が位置付けられました。これは画期的なことです。もう一つの英語であるCommunity Health、直訳すると「地域の健康」も取り扱うという意味です。パンデミックの時代により重要性が再確認されており、この両者を同時に取り扱う医師を育てるべく、挑戦しています。
そう、挑戦、チャレンジなんです。旗を振り続けております。残念ながら我が国の医療の業界ではまだまだ総合診療医に対する認知度は低く、医学生や研修医の志望診療科名にも少ないのが現状です。しかしこれまでの様々な研究報告によると、家庭医・総合診療医がしっかりと制度として確立されている国では患者の満足度が高く、医療の質が高く、医療費も抑えられ、様々な指標が良い成績を出しているとされています。こうした他の地域の良い点を徹底的に取り入れて、自分たちの地域とのすり合わせを考えながら、より良いものにすべく努力を続けていきます。こうした姿勢を医学部はもちろんのこと、大学本体もバックアップしています。また宮崎県、市町村など行政の理解やご支援もいただいております。感謝です。「地域での教育こそ、地域医療の鍵である」を合言葉にここまでやってきております。大学の中だけでなく、地域での学びを皆さんと一緒になって提供してより良い医療人を育てていきましょう。
当サイトでは、医学生、専攻医、教員の熱い「思い」を知ることができます。ぜひ読んでみてください。大学構内や地域で彼らを見つけたら、ぜひ声を掛けてください。大きな励みになります。
またトップページの最下部にリンクを貼っていますが、我々の仲間たちが宮崎県都農町で展開している取り組み「つのまる」も紹介されています。難しい言葉ではなく、イラストやわかりやすい事例などが紹介されています。身近に感じることができると思います。この中に登場してくるような医師を一人でも多く育てていきます。たとえ総合診療医(家庭医)の道を選ばない学生・研修医さんにも、こういうことを大切している医師がいる、仲間がいるとわかっていただけると、相互理解が深まり、とても連携が良くなると信じています。
日本、宮崎県、都農町をはじめとする各地域で直面している課題は、実は世界共通の課題であったりします。愚直にローカルに徹してやることが、実は即、グローバルという経験をしています。そのことを地域から発信する、エビデンスを作る、海外の方との交流も積極的に行っていきます。よろしくお願い申し上げます。
宮崎大学 医学部 地域医療・総合診療医学講座 教授 吉村 学