次世代をつくる
誰もが住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最後まで続けることができるよう支援ができるような社会をつくっていく。いわゆる医師の視点ではなく生活者の視点にたつ「地域包括ケア」の概念。
そして、日常的に頻度が高く、幅広い領域の疾病と傷害等について、適切な初期対応と必要に応じた継続医療を全人的に提供し、一方で「地域を診る医師」として、他の領域別専門医や他職種と連携して多様な医療サービスを包括的かつ柔軟に提供する「総合診療医」。
「治す医療」のみならず「治し支える医療」も含めて、地域包括ケアの次の展開をリードしていく私たちのチャレンジを是非ごらんください。
特別教授:伊東 芳郎
総合診療医とは
主に地域を支える診療所や病院において、他の領域別専門医、一般の医師、歯科医師、医療や健康に関わるその他の職種などと連携し、地域の医療、介護、保健など様々な分野でリーダーシップを発揮しつつ、多様な医療サービスを包括的かつ柔軟に提供する医師を言います。
講座の目的
地域医療に関する教育研究を通じて、医学部生に地域医療への関心を喚起するとともに、地域医療に志を持つ医師のキャリアアップ等について支援することにより、へき地医療をはじめとする県内各地において地域医療を担う医師を養成・確保すること、専門性を兼ね備えた総合診療能力を有する医師の養成を目的としています。
我々のミッション
Our mission
総合診療医のグループを通じて宮崎県の地域医療に貢献します。
医師少数地域をはじめとする県内各地で、住民目線にたったかかりつけ医として地域医療をリードします。
我々のビジョン
Our vision
2030年までに宮崎県内の各二次医療圏の中核となる公的医療機関に総合診療医が活躍する拠点を確保し、面的に総合診療が定着する環境が整備されている社会を実現します。
我々のマネジメント
Our management
メンバーの目指すべき総合診療医としての方向性やキャリアアップの考え方等に係る個々の違いを受け入れ、認め合い、活かしていくため、従来のヒエラルキーにとらわれないフラットな関係で、メンバーが主体となって意思決定を行います。
宮崎大学医学部地域医療・総合診療医学講座の2030年までの展望 (2024)
<講座の沿革・取組等>
1.
総合診療科は、2013年に19番目の基本領域の専門医として位置づけられ、2018年から専門医の養成が始まった比較的新しい専門領域である。
宮崎大学は、宮崎県を寄附者として設置された「宮崎大学医学部地域医療学講座」を2014年に「宮崎大学医学部地域医療・総合診療医学講座」に名称変更し、2019年から総合診療専門医の養成を始め現在に至っている。
2.
「地域医療・総合診療医学講座」は、「地域医療に関する教育研究を通じて、医学部生に地域医療への関心を喚起するとともに、地域医療に志を持つ医師のキャリアアップ等について支援することにより、へき地をはじめとする県内各地において地域医療を担う医師を養成・確保すること」を目的に設置され、宮崎大学学長と宮崎県知事との協定書に基づき取組を行ってきた。
(1)宮崎大学に在学する医学部生に対する地域医療への関心を喚起する教育
(2)地域医療を志す地域枠及び地域特別枠生等への進路形成に関する指導及び関与
(3)専門性を兼ね備えた総合診療能力を有する医師の養成
(4)地域医療を担う志のある医師が地域医療に従事するためのキャリアアップ支援や指導及び助言
(5)地域医療機関への医師の派遣について宮崎県地域医療支援機構との調整
(6)その他地域医療の充実に資する教育研究等
3.
これまで、当講座は、宮崎大学医学科生に対して、地域医療の現状と課題を理解するための必修講義「地域医療学」(1~2年生対象1単位)を実施するとともに、実習では「地域包括ケア実習」(5~6年生対象:クリクラⅡ内)を担当し、地域医療への関心を喚起する教育を担ってきた。なお、クリクラⅡ内で選択可能な都農町国民健康保険病院における3か月にわたる長期滞在型地域医療実習(LIC)の取組は、全国的にも先進レベルの卒前教育として注目されている。
また、医学科生のうち地域枠の学生に対しては、年間を通じて地域医療に対する考えを深めるため、必須講義「地域社会と医療」(1年生対象)を実施するとともに、県とともに「地域医療ガイダンス」を行うなど、進路形成に資する教育を担ってきた。
4.
宮崎県内の総合診療専門医の養成については、県全体で取り組むため、2021年度から宮崎大学、県立宮崎病院、古賀総合病院、宮崎生協病院が各自で有していた研修プログラムを統合した「ALL MIYAZAKI総合診療専門医研修プログラム」を運用している。2024年4月時点で、同プログラム修了者は5名であり専攻医(専門研修中の医師)は9名である。
5.
サブスペシャリティ(総合診療科のもとに連なる細かな専門分野)としては、「ALL MIYAZAKI新・家庭医療専門医研修プログラム」がある。また2024年に県立延岡病院が「病院総合診療専門医研修プログラム」を創設したことによりサブスペシャリティの研修体制が整った。
<国等の動きと総合診療医に求められる姿>
6.
令和6年6月21日に閣議決定された国の「骨太の方針2024」では、国民目線に立ったかかりつけ医機能が発揮される制度整備を図ること、医師の地域間・診療科間等の偏在是正を図るため、総合的な診療能力を有する医師の養成を含めた総合的な対策のパッケージを2024年末までに策定することとされた。
7.
郷土の偉人で、脚気を予防し東京慈恵医科大学を創設し、我が国最初の看護師養成を行った高木兼寛は「病気を診ずして病人を診よ」と宣われた。総合診療医は、高木兼寛のいうように、患者の特定臓器に着目するのではなく全人的に治療を行うのみならず、地域に住むあらゆる年齢、性別の患者の健康問題に向き合って予防・相談・治療を行う。「骨太の方針2024」でみられるように総合診療医の養成は国全体として取り組むこととなっており、当講座もこうした国の動きを見越して、地域医療を担う医師を養成することが求められる。
<講座のミッションと当面の目標>
8.
総合診療医は医師少数地域をはじめとする宮崎県の県内各地域で、住民目線に立ったかかりつけ医として地域医療をリードすることが国や県から期待されている。
このような中での当講座のミッションは「総合診療医グループを通じて宮崎県に貢献する」ことであり、ミッション達成に向けての講座運営に当たっては、構成メンバーの目指すべき総合診療医としての方向性やキャリアアップの考え方等に係る個々の違いを受け入れ、認め合い、活かしていくため、従来のヒエラルキーにとらわれないフラットな関係で、メンバーが主体となって、総合診療医の活躍する場やイベントの開催・参加等の意思決定を行う。
また、メンバーのキャリアアップのため、診療の場のほかにも、留学の場を設ける等して教育・研究で活躍できるよう環境を整備していくことで「総合診療医グループを通じた宮崎県への貢献」をレベルアップさせる。
9.
当講座の当面の目標(ビジョン)は、2030年までに各二次医療圏の中核となる公的医療機関に総合診療医が活躍する拠点が確保され、面的に総合診療が定着する環境が整備されている社会の実現である。
このビジョンを達成するため、総合診療医を目指す医師を毎年3名以上確保することを目指すとともに、次のことに取り組んでいく。
(1)卒前教育
総合診療医を養成・確保していくため、医学科生に対する臨床実習、初期研修医に対する臨床研修及び専攻医に対する専門研修(初期研修後の専門医取得のための研修)を一体的に取り組む。
医学科生に対し、未だ行われていない「総合診療学」の講義を4年生時(3年生時)に行うことにより全学年において地域医療・総合診療に係る教育を行う機会を確保するとともに、引き続き講義・臨床実習の充実を図り、地域医療・総合診療の重要性、将来性を涵養する。
また、総合診療医を目指す地域枠生を増やすために、宮崎県地域医療支援機構大学分室の取組に協力しつつ、教育その他のはたらきかけを積極的に行う。
(2)総合診療医の養成(専門研修等環境整備)
総合診療医の養成のために、「ALL MIYAZAKI総合診療専門医研修プログラム」を運用している。またサブスペシャリティとして、「ALL MIYAZAKI新・家庭医療専門医研修プログラム」及び「病院総合診療専門医研修プログラム」がある。さらに「救急専門医」のダブルボード(基本領域2つの専門医をとること)が可能となるよう宮崎大学医学部救急・災害医学講座と協議している。こうした資格取得の環境を整備し、総合診療医を目指す医師を増やしていく。
(3)指導医の確保
指導医の確保については、プログラム修了者に指導医資格の獲得を推奨するほか、外部からの招聘に取り組む。
(4)活躍の拠点整備
2024年現在、総合診療医が活躍している公的医療機関は、県立宮崎病院、県立延岡病院、都農町国民健康保険病院、宮崎市立田野病院(指定管理者;宮崎大学)の4施設及び自治医大卒業生の専攻医が所属する高千穂町国民健康保険病院、椎葉村国民健康保険病院、国民健康保険西米良診療所である。このうち宮崎県立延岡病院について、2025年度より「ALL MIYAZAKI総合診療専門医研修プログラム」の基幹施設として、当講座も連携して医師少数地域をはじめとする宮崎県の県内各地で活躍する総合診療医の養成に取り組む。
まずは各二次医療圏の中核となりうる公的医療機関に総合診療の拠点を整備する。今後、宮崎県と協力して公的医療機関に総合診療医の活躍する場を確実に確保していく。
(5)環境変化への対応
今後、国の政策をはじめ総合診療医を取り巻く環境の変化が想定されるなか、その対策をフレキシブルに見直すことにより、総合診療医グループを通じて宮崎県への貢献を着実に行っていく。